70歳を過ぎた母の挑戦

 

 70歳を過ぎた菅野の母がようやくスマートフォンを持った。時々、LINEを通じて「ガーデニングをがんばってます」と写真つきで近況を報告してきたり、「練習です」と言って動画を送ってきたりする。

 

 新しいことだからと言って、スマホを持つことにはずっと及び腰だった。はなっから「使いこなせない」と決めつけていた。息子たちは「できないと最初から諦めないで、とりあえずやってみればいいよ」「できることが増えたら人生が楽しくなるよ」「わからないことはわかる人に聞けばいいから」と説き伏せて、ようやく重い腰を上げることに成功した。

 

 「私にはスマホは必要ない」と当初は頑なだった母は今、わからないことはわかる人に聞き、できることが増えた喜びを楽しんでいるみたいだ。孫とのテレビ電話で声を弾ませたり、自分の姉をスマホデビューに導いて「姉に動画の上げ方を教えてきます」と連絡を入れてきたりしている。

 

「できない」「やれない」というのは簡単だ。でも、どうやったらできるかを考え、挑戦してみれば意外とこなせる。菅野は実体験を通して知っている。画像編集ソフトのPhotoshopやイラストやグラフィックをつくるIllustrator、動画編集ソフトのiMovieも、使いこなせる人間に質問を重ね、関連本を読み、切り盛りできるようになった。

 

 現状維持は停滞と言っていい。いや、世の中はどんどん進んでいるんだから、

「これでいい」「今のままでいい」といった現状維持の姿勢は、後退に他ならない。「できない」を「できる」に変えるのか変えないのか、進むのか取り残されるのかを決めるのは、ほんの少しの気の持ちようだ。

 

 どのみち生きていくのなら、できることを増やしてなるべく多く楽しい時間を過ごしたほうがいい。菅野も、ライターや編集者として、未知の分野や新しい世界に向き合う経験は、純粋に胸が踊る。

 

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