すべては流れゆく

 

 

 菅野は43歳の誕生日に、自分でデザインしたTシャツを自分にプレゼントした。

 

 「Everything Flows」はお気に入りのティーンエイジ・ファンクラブの曲名だ。「Flow」という英語には水が流れていくイメージがある。風の流れも思わせる。

 

 「Everything Flows」はギリシャ人の哲学者ヘラクレイトスが唱えたという「万物流転(Panta Rhei)」の英訳として知られている。常に同じものは何一つとしてない。あらゆるものは流れ去るように変わっていく。その考え方が菅野は気に入っている。

 

 ティーンエイジ・ファンクラブが「Everything Flows」をリリースしたのはもう30年近く前になる。1990年、まだ25歳くらいのノーマン・ブレイクたちはこう歌った。

 

I'll never know which way to flow

Set a course that I don't know

 

「どこへ流れていくのか、僕には永遠にわからない。まだ見ぬ方向を、指し示してくれないか」というフレーズを繰り返す。不透明な未来しか見えない、そんな若者ならではの不安を歌詞にのせた曲のように思える。

 

 40歳を過ぎ、喜びも悲しみもそれなりに経験してきた菅野は、それでも同じように「どこへ流れていくのか、僕には永遠にわからない」と感じている。でも、「まだ見ぬ方向を指し示してくれないか」とは思わない。

 

 常に同じものは何一つとしてない。あらゆるものは流れ去るように変わっていく。絶対的な正解がなく、自分がどこに向かうのかわからないからこそ、生きていく価値がある。そう考えている。水の流れに乗れなくても、風の流れに乗れなくても、それはそれでいいと思っている。

 

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